桜幻 18
2008年 11月 04日
いつもののどかな昼下がり。
漂う紅茶の香り。
絶え間なく響く少女たちの笑い声。
不意に現れた人物と認めると、サーッと少女たちは温室を出て行った。
「噂は健在ってわけだ」
「そうみたいね」
「この際、事実にする気ないか?」
春乃はちらっと杉原を見ただけでそれに答えず、違うことを話し始めた。
「陸海の奥さまに泣きながらお願いしたのがよかったのかしら? 華櫻の土地をいただけたの」
「曰く付きのようだし、厄介払いってところだろ?」
「合併も白紙にされたし、落ち着くとこに落ち着いたってことかしら?」
「そうそう、うちの親父が理事になるとかっているぞ」
「名実ともにヤクザの予備軍校」
「やり方さえ上手けりゃ、儲かるとか言っているしな…」
「誰が経営しても別にいいけど、掘り返すことはしないでね」
「それって…」
「白骨がゴロゴロ出てきたら大騒ぎでしょ?」
「……墓場かよ」
「桜の名所なんてそんなものよ」
「そうか…」
「そうよ。調べてごらんなさいよ。戦地だったとこって、結構多いのよ」
「ふーん。まぁ、祟りには相応しいな」
テーブルに上に広げてある週刊誌の見出しを目線で指した。
内容は、水ノ宮学園の理事長だった陸海を皮切りに、関係者が次々と変死している。華櫻高校を買い取り、桜に手を入れようとしたための祟りじゃないかと、いい加減な逸話を交えて書かれていた。
「あっ…」
不意に何かを思い出したらしく、春乃は声を上げた。
何だ? という表情で見つめてくる杉原に春乃は言った。
「私と付き合いたかったら、蘭丸の許可をもらってね」
「蘭丸? 誰だそれ」
「親戚。兄みたいな存在かな? お母さまの再従姉弟なんだけどね」
「保護者にご挨拶ってわけか…」
「警視庁にお勤めの刑事なの~」
楽しそうに言う春乃を、杉原は嫌そうな顔で見つめた。
END
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漂う紅茶の香り。
絶え間なく響く少女たちの笑い声。
不意に現れた人物と認めると、サーッと少女たちは温室を出て行った。
「噂は健在ってわけだ」
「そうみたいね」
「この際、事実にする気ないか?」
春乃はちらっと杉原を見ただけでそれに答えず、違うことを話し始めた。
「陸海の奥さまに泣きながらお願いしたのがよかったのかしら? 華櫻の土地をいただけたの」
「曰く付きのようだし、厄介払いってところだろ?」
「合併も白紙にされたし、落ち着くとこに落ち着いたってことかしら?」
「そうそう、うちの親父が理事になるとかっているぞ」
「名実ともにヤクザの予備軍校」
「やり方さえ上手けりゃ、儲かるとか言っているしな…」
「誰が経営しても別にいいけど、掘り返すことはしないでね」
「それって…」
「白骨がゴロゴロ出てきたら大騒ぎでしょ?」
「……墓場かよ」
「桜の名所なんてそんなものよ」
「そうか…」
「そうよ。調べてごらんなさいよ。戦地だったとこって、結構多いのよ」
「ふーん。まぁ、祟りには相応しいな」
テーブルに上に広げてある週刊誌の見出しを目線で指した。
内容は、水ノ宮学園の理事長だった陸海を皮切りに、関係者が次々と変死している。華櫻高校を買い取り、桜に手を入れようとしたための祟りじゃないかと、いい加減な逸話を交えて書かれていた。
「あっ…」
不意に何かを思い出したらしく、春乃は声を上げた。
何だ? という表情で見つめてくる杉原に春乃は言った。
「私と付き合いたかったら、蘭丸の許可をもらってね」
「蘭丸? 誰だそれ」
「親戚。兄みたいな存在かな? お母さまの再従姉弟なんだけどね」
「保護者にご挨拶ってわけか…」
「警視庁にお勤めの刑事なの~」
楽しそうに言う春乃を、杉原は嫌そうな顔で見つめた。
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by 1000megumi
| 2008-11-04 09:10
| 小説 桜幻(完結)