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オリジナル小説&エッセイ


by 1000megumi
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桜幻 プロローグ



 腰に届くほど髪の長いその人影は、漂うようにそこを歩いていた。
 重力というものを感じさせない足取り、現実味のない幻のように、ふわり、と歩いていた。
 桜の魔力に囚われた者だけが見る、月夜の夢。
 闇夜のような漆黒の髪。月明かりに浮かび上がる桜のような白い肌。桜の根に抱かれ眠りについた者の血を吸い上げた、薄紅色の花びらのようにほんのり色づいた唇。
 そして、その瞳は――桜と同じ。魅了し、捉え、離さない、魔力と秘めた瞳。
 セーラー服を身につけたその少女。
 桜の楽園に誘う。
 無邪気なあどけない笑顔を見せて、誘う。
 天女のように微笑みながら、誘う。
 桜の楽園に…。


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目次
by 1000megumi | 2005-04-30 20:59 | 小説 桜幻(完結)